お役立ちコラム
のり面工事の役割と施工方法とは?工事の役割と種類別の工法を解説
2023年06月30日
「のり面工事とは?」
聞き慣れない工事の名前に、戸惑う方は多いでしょう。
のり面工事について、工事の特徴と種類別の工法を解説します。
のり面工事のさまざまな工法を、種類別で比較していますので、理解しやすいはずです。
のり面工事を身近に感じて気になっている方は、ぜひともこの記事をご覧ください。
のり面工事の特徴は斜面の保護
のり面は、一般的に聞き馴染みのない言葉ですが、人工的な傾斜面を意味します。
のり面ができる条件は、2通りです。
切土(きりど)または盛土(もりど)により作られます。
どちらも、住宅開発などで平らな土地を作るために行われる工事です。
切土は、自然の上昇斜面や高い地面を削り下げる工事を示します。
盛土は、自然の下降斜面や低い地面を盛り上げる工事を示します。
のり面は、自然の地形に人間が手を加えて作り変えたものです。
自然環境による浸食や崩壊の危険性が高く、景観を損なう点も気になります。
のり面工事は、浸食や崩壊を防止して景観を保全するため対策として、のり面保護する重要な役割を果たすでしょう。
のり面工事は3種類
のり面工事には数多くの工法があり、以下の3種類に大別できます。
・植生工(しょくせいこう)
・構造物工(こうぞうぶつこう)
・排水工(はいすいこう)
3種類の特徴を、比較しやすいように表にまとめました。
植生工 |
構造物工 |
排水工 |
|
材料 |
植物(種子、水、肥料) |
モルタル、コンクリート、アンカー、板柵など |
コンクリート、配管など |
方法 |
植物を繁殖させる |
構造物を造成する |
排水路を設置する |
特性 |
景観・環境の保全効果 |
力学的な防御効果 |
浸水による崩壊の抑止効果 |
3種類の特徴を解説していきます。
1. 植生工
種子や水、肥料などを投入し、植物を繁殖させる方法です。
植物の葉や根が、のり面の浸食や風化を防ぎ、かつ緑化効果で美観を保ちます。
2. 構造物工
モルタル、コンクリート、アンカー、板柵などの構造物を造成する方法です。
構造物が、のり面の自然環境による浸食や崩壊を、力学的に防ぎます。
3. 排水工
コンクリートや配管などを使って、排水路を設置する方法です。
排水路が、のり面の降雨による表面水や浸透水を排出させ、浸水による崩壊を抑止します。
植生工に含まれる3つの工法
植生工に含まれる具体的な工法には、どのようなものがあるのでしょうか。
数多くある工法の中で代表的なものは下記の3つです。
・種子散布工(しゅしさんふこう)
・客土吹付工(きゃくどふきつけこう)
・植生マット工(しょくせいまっとこう)
1. 種子散布工 | しゅしさんふこう
種子、肥料、養生材などを混合して散布する工法です。
一度に広範囲の散布が可能で経済的です。
しかし、急な傾斜面や硬い地盤には向きません。
2. 客土吹付工 | きゃくどふきつけこう
ラス金網またはネットを張ったあとに、種子や肥料、土などからなる混合材を吹付ける工法です。
硬練りの泥状のものを、ポンプで圧送して吹付けます。
3. 植生マット工 | しょくせいまっとこう
種子、肥料、養生材などが充填された植生基材袋装を、マットに装着して被覆させる工法です。
通年の施工が可能で、安定した緑化を期待できます。
海岸地帯の風衝地でも、比較的基盤が剥がれにくく、効果が維持されます。
構造物工に含まれる4つの工法
構造物工に含まれる具体的な工法には、どのようなものがあるのでしょうか。
数多くある工法の中で代表的なものに下記の4つがあります。
・吹付法枠工(ふきつけのりわくこう)
・グランドアンカー工(ぐらんどあんかあこう)
・モルタル吹付工(もるたるふきつけこう)
・雪崩防止工(なだれぼうしこう)
1. 吹付法枠工 | ふきつけのりわくこう
格子状のコンクリートを、表面造成で使用して、地盤の安定固着を図る工法です。
浸食や表層崩壊の防止、緑化の基礎工を目的に使われます。
グランドアンカー工と一緒に使えば、深層崩壊の対策にも役立ちます。
2. グランドアンカー工 | ぐらんどあんかあこう
ボーリングマシンにより表層から地中へ穴を開け、引張り材を挿入して薬液注入(グラウチング)する工法です。
モルタルなどを注入して隙間を埋め、岩盤に引張り材を定着させます。
引張り材に緊張力を付与して地盤内に圧縮応力(プレストレス)を働かせ、地山の変動を抑止します。
類似する工法に、ロックボルトがありますが、こちらには圧縮応力の働きはありません。
3. モルタル吹付工 | もるたるふきつけこう
ラス金網を張ったあと、モルタルを吹付ける工法です。
コンクリートを吹付け材として使用する、コンクリート吹付工もあります。
湧水が少ない、崩壊の危険性は低いが、風化が心配される岩盤で使用します。
4. 雪崩防止工 | なだれぼうしこう
雪崩が発生しやすい環境の場合に、表層部に雪崩を食い止める障害物を設置する工法です。
凸型ブロックが使われ、全層雪崩の抑止が期待できます。
排水工に含まれる2つの工法
排水工に含まれる具体的な工法には、どのようなものがあるのでしょうか。
数多くある工法の中で代表的な2つの工法を紹介します。
・表面排水工(ひょうめんはいすいこう)
・地下排水工(ちかはいすいこう)
1. 表面排水工 | ひょうめんはいすいこう
地盤表面や隣接地に溜まる水を排除する工法です。
以下4つの工種を施工します。
・のり肩排水溝
・小段排水溝
・縦排水溝
・のり尻排水溝
2. 地下排水工 | ちかはいすいこう
地下水位の低下を目的に、地中の浸透水を排除する工法です。
以下4つの工種を施工します。
・地下排水溝
・地平排水孔
・水平・基礎排水層
・のり尻工
まとめ
本記事では、のり面工事について、工事の特徴と種類別の工法を解説しました。
のり面工事のさまざまな工法を、種類別により比較しているため理解しやすくなるでしょう。
のり面工事を身近に感じて気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
のり面工事を理解するのに、この記事が役立てば幸いです。